「俺はあいつが好きだ」

明智光秀という人は、美濃の国の斎藤道三の縁戚であり、そして学問教養があり、軍略兵法に長じ、戦が非常にうまくしかも射撃の名手だった。だから本来ならば一番先に頭角をあらわすべきはずなのだが、他人から好かれるという要素が極めて少なかったのが災いしたのであります。主人の織田信長という人は歴史でご存知のとおり、戦には強かったが、わがまま勝手で非情な癇癪もち。その乱暴な主人に仕えた秀吉の「他人に好かれる要素」というものは、ありがたいものですな。ずいぶん大きな失敗もしたけれども、「阿呆」という信長の大喝だけで済んでしまう。秀吉が、後の雁が先になるようにどんどん出世するので、あるとき大番頭の柴田勝家が、他の家来たちの思惑も考えて信長を諌めたところ、「俺はあいつが好きだ」と言って信長は、ニッコリ笑ったといいます。理屈はないんですよ。