何かに頼ろうとしない

 本当から言ったらば、宗教というようなものは、人間の心のなかに自分自身を強く生かすものを充分にもっていないがために、古代人が考えついたもので、人間が自分の心を自分で完全に統御、支配ができるものならば、宗教というようなものは生まれなかっただろうし、また同時に、人間が人間を考える哲学なんていう学問もけっして生まれなかったろうと私は思うのであります。

 その証拠には、正しい人生真理を悟りえた人は、何ものかに頼ろうとか、何ものかにすがろうと言う気持ちはなくなっているでしょう。いわゆる自主自立の、人間としての尊い大精神がその心のなかで働いている人間には、健康的な出来事であろうと、運命的な出来事であろうと、すべて自分の生命の力で解決して生きる方法も手段も知っていますから、救われたいとか、すがりたいとかいう気持ちは断然ないに相違ないのであります。

 そういう人間には従来の哲学も必要としないし、宗教に対しても、ただこの宇宙をつくった根本主体に対する尊敬はもっていますけれども、すがりつこう、頼ろうとする気持ちはありません。

 厳粛な意味から言ったら、人間というものはそうして生きなきゃ本当じゃないんです。