治るときが来れば治る

 フランスで風邪をひいたとき、私は医者にかかった。そして、いかにフランスの医者が肉体よりも心を大事にしているかということを知った。

 熱が高くて苦しんでいると、医者が来て診察した。「それじゃ、また、二、三日たって来るから」「明日もまた来ていただけませんか」と言うと「そんな、風邪ひきくらいに、毎日来る必要はないでしょう」「では、薬は何をのんだらいいでしょう」「薬? こんな病にのむ薬があるかね」と言う。「薬なんかいらない。温かいコーヒーなり紅茶なりを飲んで、寝ていれば心配ない。治るときが来れば治る。それが何よりの養生だ」と言う。

 いままでの経験を考えてごらん。効かない薬を、のまなくてもいいのにのまされた覚えがありゃしないか。この医者の言葉でもわかるように、たいていの病はまず、心を強く、第一番に病を気にしないようにすることなんだ。