病から心を放す

 病める人は、その病から心を放してしまいなさい。病のとき、病を一生懸命大事に考えていないと、病が癒らぬように思っているとしたら、大間違いである。船に乗っても、もう波が出やしないか、嵐になりはしないか、それともこの船は沈みはしないかしら、と考えていたならば、船旅の良さ、快適さは何もあるまい。人生のまたしかりなり!

 ああはなりはしないか。こうなりはしないか。すべったの、ころんだの、と考えていたら、人間、一分一刻も、安心した刹那はないじゃないか。船に乗ったら船頭まかせ。病のなったら医者まかせ。という言葉が昔からあるではないか。病になったならば、こういうことを悟ろう。

 「治る病ならば、ほうっておいても治るんだ!」これを医者がきくと納得するが、素人は「治らない病でも、お医者にかかれば治るでしょう」と思ってしまう。医者にかかっても治らない病気は治らない。治らない病は、一生にいっぺんしかない。もしあるなら二度も三度も死ななきゃならない。しかし、それまでは、その度に死にはしないんだから安心しなさい。だから病になったら、医者にかかるもよし。医者にかかった以上は医者にまかせなさい。病になったならば、病をむしろ忘れるくらいな気持ちになりなさい。病は忘れることによって治る。