心の垢を取ってから寝床に入る

 夜の寝がけは、どうせ何も知らない熟睡という境涯に入る前奏曲なんだから、枕を頭につけているときには、心の中を、もう、共同便所の壁みたいに汚くして眠るてぇことは人間のすることではない。体に汚れがついていたら、寝床に入る前に、必ずきれいにしてから入ろうとするだろう。

 「おい、おい、お前の鼻の頭に、墨が付いているよ」「有難う。どうせ、明日の朝起きたら顔洗うから、今夜はこのまま眠るよ」てぇ奴はねぇだろう。男でも一生懸命、その鼻の頭をこすって、「どうだい、とれたかい」「とれたよ」と言うと、安心する。顔についた墨や垢はそれだけ気にするのに、心の上には平気で垢つけて眠るんだよ。」あなた方は。

 夜の寝がけは、それがたとえ嘘であってもほんとうでも、その考えた考え方が無条件に、われわれの潜在意識の中に、すっとはいって来る。そういう作用がどんな人間にでもあるのです。