言動に注意する

 私はどんなに体の具合が悪いときでも、体の具合が悪い、と言ったことがありません。だから家の人たちが言うでしょう。「先生が亡くなるときは、きっと、誰も知らないときに死んでしまうでしょうね」

 私は二、三日たってから、よく言うことがあるんです。「一昨日だったかな、少し頭が痛かったね」これでは誰も心配してくれませんよ。もし万一、私が、「いま俺は頭が痛いんだ」と言えば、私を命の綱として頼っている人々は、必ず心配するに違いない。どんなことがあっても私は、体の具合の悪いことを言ったことがない。私の体を診てくれている医者に聞いてごらん。

 「ご気分は?」「ごらんのとおり」「食欲は?」生きているから食ってるよ」「夜は?」「よく寝るよ」

 それ以上深く問うと、「あんた医者だろ。見た目のとおりだ。私が痛いといっても、助けてくれるどころか、あなた方、心配するばかりだよ。そうだろ。言ったからといって、何も助けてくれやしないよ。だから、言わないんだ」。

 しょっちゅう、ごらんのとおり、にこにこしているのであります。