悪人と善人

 いつかある人が私に聞いたことがある。

「先生のところには、どんなことがあっても、機嫌の悪いという人を見かけたことがないが、誰もどんなことがあっても、お怒りにならんのはどういうわけです?」と言うから、

「それはね、俺のところはみんなね、悪人ばかり多いからだよ」こう言ったら、その人が目を丸くして、

「先生のところは悪人だらけですか!?」

 まだ意味がわからないから、「どうゆうわけです?」と聞くから、「私のところじゃ、何か事が起こるだろ。そうすると、『あ、私が悪かった』とこう言う。誰でもいいから、私が悪かったってことを言って罪を背負ってしまうと、喧嘩にならない。人が一言でも、『あ、私が悪かった、そこにそれを置いていたもんだから、壊れたのね』というふうに言っちまうと、これ、喧嘩にならないよ。ところが、あなた方の家庭だと、善人ばかりだからいけねえ。何か事があると、『私はいいんだ、私は何も悪いことをしていないだ。あの人が悪いんだ』とこうなるから。そりゃ好きに喧嘩をやりだすものね」