神経過敏

 神経が過敏になったら、それはもう、「風声鶴唳逡巡忸怩」という状態になってしまうんです。鶴の鳴き声にもびっくりして飛び上がり、そよ風にもフウーッとなってしまうのが「風声鶴唳」。前へ出ようか、後ろに行こうか、立っていようか、座っていようかわからなくなってしまうのが「逡巡忸怩」。

 神経が過敏だと、正当な幸福に恵まれても、恵まれたと思いません。月を見ても、花を見ても、人生生活を楽しもうという気持ちが心のなかからでてこない。見るもの聞くもの、みんな癪の種、心配の種になってしまう。ですから、日々が少しも安らかな、いわゆる安心立命の境涯で生きられないことになってしまうんです。

 感情や感覚がしょっちゅう誇大に心のなかで暴れ回る。後から考えてみると、たいして腹の立つことじゃなかったことや、別に泣くことでもなかったことでも、そのときは五か十ぐらいの繊細なことが、百、二百と感じてしまうんです。忍べば忍べることも、忍べないんですよ。これが腹立てずにいられるとか、人ごとならとにかく、己のことを心配しなかったら馬鹿だ、と思ってしまうんですよ。

 しかし、自分でいろんな屁理屈をつけて自己弁解したって、それは駄目ですよ。