怒りはすぐに消す

 そりゃあ、私だって人間です。裸にすりゃあ、へそはやっぱり一つですよ。修行して、インドへ行って難行苦行したから、へそが三つになったわけじゃないんだから。だから、私だって。そりゃあ腹の立つこともあれば、悲しくなることもある。特に怒ることは、私は自分でも恥ずかしいぐらい、のべつ怒ってたという人生だったんです。今でもときどき、そういう気持ちが出ますよ。

 こう言うと、「へえー、じゃあ天風、あんまり偉くないね」「あんまり偉くねえんだ」「それじゃあ、俺たちと同じじゃないか」「そう、同じ人間だもの」。

 ただ違うところが一つある。どこだというと、同じ怒る、同じ悲しむんでも、「あ、今、天風先生、怒ったな、今、天風先生、悲しんだな」と、あなた方に見えないうちに消しちまう。パパッ、パパッと

 あなた方は、怒りだしたり、悲しみだすと、そらもう派手ですぜ。すぐ第三者に、「あ、怒ってる、悲しんでる」とわかるようにやりだすね。

 そうして、わからせたうえに、これがまた実に、ほかのことじゃ辛抱強くもないのに、そういうときの感情だけは実に念を入れて長く続かせるね。それを執着と言うんですがね。