満足する習慣

 人間は、腹が減ったときに何かうまいものが食えりゃ幸いだと思うし、デパートにでも行って、「ああ、あの着物」と思ったときにすぐ、「買ってやろうか」と買ってもらったら、「ああ、幸福だ」と思うだろう。

 まあ、それも不幸だとは言わないけれども、本当の人生の幸福とはどういう幸福だというと、簡単なんですよ。人生に何の悶えもないときが一番幸福なんだ。ああ、あれが欲しい、これがこうなりたいというときは、もう幸福じゃないんだよ。一つの要求が出てくると、それが満たされるまでは少しも幸福を感じやしない。

 ただ現在与えられたものをもって満足するという、いわゆるその分に安んずる習慣をつけなさい。これが難しいようで、実は易しいんだが、易しいことを難しいように考えるのが人間だ。

 「ありのままに我ある世とし生き行かば、悔いも怖れも何ものもなし」

 ただ現在与えられたところを試しにヒョイと振り返ってごらん。そうすると、人生に悶えというのは、そう湧いてこないから。