中村 天風 略歴
1876年(明治9年)7月30日、東京府豊島郡(現東京都北区王子)で生まれる。本名、中村三郎。1904年(明治37年)、日露戦争の軍事探偵として満州で活躍。帰国後、当時死病であった奔馬性肺結核を発症したことから人生を深く考え、真理を求めて欧米を遍歴する。その帰路、ヒマラヤの麓でヨガの聖者の指導を受け、病を克服。
帰国後は実業界で活躍するも、1919年(大正8年)、突如感ずるところがあり、社会的地位、財産を放棄し、「心身統一法」として、真に生きがいある人生を生きるための実践哲学についての講演活動を始める。同年、「統一哲医学会」を創設。政財界の有力者をはじめ数多くの人々の支持を受け、天風哲学として広く世間に認められるようになる。昭和15年、統一哲医学会を天風会と改称。昭和37年、財団法人の設立許可を受け、現在に至る。
1968年(昭和43年)12月1日逝去、享年92歳。著書「真人生の探究」「研心抄」「錬身抄」他。
「心身統一法」とは「天風哲学」と呼ばれる宇宙観、生命観 人生観をバックグラウンドにして組み立てられたもので、“いのちの力”を充分に発揮するための中村天風オリジナルの理論と実践論です。
心の態度を積極的にし、体の状態を健全に保つことで、健康で幸福な人生を堂々と歩むことができるのです。昔から学者、識者、宗教家による幸福論は多数ありますが、そのすべてが「How to say」という理想論に終始し、具体的な実践論である「How to do」が示されたことはほとんどありませんでした。
偉大な“いのちの力”は生まれながら誰にでも与えられているものです。ぜひあなたも心身統一法を実践して、ほんとうに生きがいのある充実した価値高い人生を獲得してみませんか。
心身統一法~主な方法の説明
観念要素の更改法
夜寝る前の連想暗示法、鏡に向かいなりたい自分の精神状態を命令する命令暗示法、その効果をより的確にする断定暗示法やそれに付随する方法により、消極的な心を一掃させます。
積極観念の養成法
毎日の生活の中でともすれば不平不満、愚痴、不安や心配など、心を消極的に使う癖がついているのを訂正して、積極方向に習慣づけることにより心を強化する方法です。
神経反射の調節法(クンバハカ)
外部から与えられる精神的·肉体的ショックから受ける自律神経の動揺を防止し、精神の安定を確保することができる体勢のとり方とその訓練法です。マイナスの感情に振り回されることがなくなり、生命に大きなダメージを与えるようなストレスから身を守ります。
呼吸操練
生命を維持する上で最も大事なものは空気です。この空気の中から、新鮮な活力を各器官に受け入れているというイメージと共に行う呼吸法で新陳代謝を促し自律神経を強化します。
統一式運動法
18種類の運動によって組み立てられ、各動作はいずれも精神を強くし信念を確立するような哲学的意味が配されています。運動神経を活発にし、筋肉を鍛え内臓器官を強化します。
積極体操
自分自身の周囲にある消極観念を打破して、心持を積極に振り替える体操です。動作に合わせて集中と転換を繰り返し、精神(心)の使い方もあわせて訓練します。
養動法
座った体勢、立った体勢、横たわった体勢で体を動かし、心と体を調和させます。神経の興奮を静め気持ちを安定させるとともに、内臓の働きを高め、消化を促進させ、運動不足を補います。
安定打坐法(天風式坐禅法)
人生の不安や悩み、煩わしい日常生活でのストレスなどで疲れきった心を、余計なことを考えず何事にも捉われない純粋無垢な生まれたての心にリセットし、命の中にある無限の力を自覚するための行法です。ブザーの音に耳を傾けて心を集中し、ブザーの音が途切れた瞬間に「無」の心を体験することが出来ます。宮本武蔵や現代の一流スポーツ選手、天才芸術家などと称される人々が事に臨んで最大の力を発揮することができる、いわゆる「無念無想」の境地です。「無」の瞬間を繰り返し体験することにより、私たちも日常生活においてもまた人生に事あるときも変わることのない絶対的な強さをもつ心を発揮することができます。